モトグッツィ は日本でモトグッチなんて呼ばれ方をしているけど、正式にはモト・グッツィと言います。そんなことはさておき、ロンバルディアの青い空を思い浮かべながらほぼ毎日、明けても暮れてもレストア作業とパーツの発注に忙しい私です。これは実はもうある程度終わってから記事にしてるのでその時間を思い返すと、いろいろ思うところもありますが、さて今回は電気配線やホース類のリプレイスや点検を行った記録です。
実はレストア作業って凄い事のように思っている人もいるかと思うのですが、そんな事はありません。現代のコンピュータを積んだバイクではないので極めてシンプルで簡単な構造とも言えるのがこの時代のバイクです。
でも、何が何だかわからないと思われる方もいらっしゃるので、先ずは簡単に頭を整理することが大事なんです。
そもそもバイクや車って何で動くの?
シンプルに電気と空気とガソリンが燃える事で動いてます。
これは今の時代も変わる事なく、同じなのです。
僕のルマンに置き換えると、発電/オルタネータからバッテリーに行き、イグニッションコイルからスパークプラグに電気が送られ、キャブレタで空気を吸って、タンクからきた燃料と空気を混合させた物をピストンが動く事により注射器のようにシリンダ内にキャブから吸い出して、プラグコードが火花を散らし、シリンダ内で燃え、その力でピストンが上下運動を繰り返し、排気、吸気(燃料含む)の連続運動を行うだけの物です。
エンジンをかけるためにセルモーターが点火の前にピストンを動かしてくれたり、キックで人間が動かしているから、始動は行われるわけです。つまり、シンプルに通電が行われ、ピストンがスムーズに動き、キャブが空気と燃料を適切に混ぜた物をエンジンに放り込んでくれればいいだけです。
壊れた、調子が悪い、と思うなら電気、空気、燃料がまず適切なのかを考え、さらに注射器と同様のピストンが適切にキャブから空気と燃料を吸い出せているか?(圧縮)を考えれば理解できると思います。
でもそれにプラスして知識の領域が広がると、プラグの点火タイミングや、キャブの燃料と空気の混合率の調整や、エンジンの吸気、排気弁、つまりバルブやそれに伴うタペットの調整の技術や専門的な知識が必要な工程に入ってきます。
でも、恐れなければ先ずは10年前は無事に走行していたのだから、空気、燃料、電気をチェックしていけば道は拓けてくるものです。
それが理解できれば、ほら、たかがボルトを緩めて締めるだけなのですから誰にでも可能なことかと思います。最悪わかんなくなったらプロに頼んじゃえばいいんです。でも、何も理解できないで頼むことは出来ないと思いませんか?
これエンジンかからないからなおして?とか、調子悪いんだけどどうしたらいいか?なんて持って行っても、プロの整備士だって原因なんかわかるわきゃないんです。だって、普段からそのバイク見てないなら、消耗部品のサイクルや、エンジン内のパーツの交換サイクルなんか壊れた症状で理解できる範疇は限りなく少ないんですよ。
何故エンジンがかからないのか?だけで無限の可能性があったりします。
プロにも責任がありますから、受けた以上は直さなければなりませんし、不具合を見つけなければならないので余計な時間と作業が山ほどかかって請求の値段に乗ってきます。
それなら、壊れた箇所を名指しでこれだけ交換してちょうだい、点火時期がズレちゃってるみたいだから調整してちょうだい、とピンポイントで言うことが出来ればそれしかプロには責任がありませんし、それだけやればいいわけですから金額も安くなりますし、技術者との会話も弾んで仲良くなることもできますよね。
そうするためにはこのモトグッツィ ルマンの全ての状況を把握しないといけませんので、自分でレストアを行なって現状を明確に確認しているのです。
お店との信頼関係が揺らぐときってだいたいは自分の知識不足だったり、経験不足だったりする中で、極力安くお願いしたい場合に起こる場合が多いです。
プロとしてはあれもやったほうがいい、これもやったほうが先々安心だと思っていても、乗る側は理解できなければ、とりあえず壊れた箇所だけを修理する金銭しかなければ、そこだけ修理して送り出します。店側もなるべく安くやってあげたいとも思うでしょうから。
そして短い期間でまた違う箇所が、、、というジレンマに陥り、嫌になり手放したり、技術者の責任にして悪口を言う人も実に多いと思うのですね。
それらが面倒なら新車を購入して同じディーラーで整備を継続的にやってもらうしか無いわけで、こういった古い不動バイクを手に入れることがどういう事なのか?
それを考えた先にある、それに乗り続けたい、走りたいという幸福感を私は求めているわけです。

ルマン3はエンジン本体からブリーザーホースが出ていて、フレームの中に接続されています。もうあちこち劣化で切れてしまっているので新品に交換しました。エンジン側に簡易な弁がついていて圧で開く仕組みですので、ホースなんかホムセンで径と耐久度が合えばなんでもいいわけですし、逆にレーサーみたいなしっかりとしたホースを組んでも安くてカッコ良いのですが取り敢えずは手に入るノーマルパーツは発注というわけで、新品と交換しました。リタン側は見当たらなかったのでホムセンで耐油性の高いホースに交換です。
タンクやキャブを外してしまえば劇的に整備性が良くなるのがこの手の年代のバイクのお約束。

IGコイルの抵抗値を調べ配線の電圧も調べ、さらに接点を磨き。
わからなくならないように写真を撮りまくります。
なにせ手元にマニュアルもありませんし、ネットを検索しても当然、そんな記事は出てこないのです。ネットや検索は万能って思ってる人もいるかもしれませんが、所詮はネットに載っている物は2000年代以降の知識が大半だったり、古い物でも現代に流行して流通している物は書く人もいますが、そもそも台数も少ないこの手のバイクはパーツごとに清掃や取り外しをしながら、組み上げて行くしか方法はありません。

真ん中の太いのがプラグコードとなり、奇跡的に手に入れた配線図を追いながら線や接点の劣化を確認し、直して行きます。プラグコードは当然、カバーも含め、全部ダメになっているので交換となりました。プラグはイリジウムに変更し、コードは赤のシリコンコードにしました。
当然この手のモノも磨き上げ、長年の埃や錆、汚れをきれいに落とし、再度戻して通電確認をしていきます。

キャブレターは時間がかかるので、そこからエンジン内に雨やほこりが入らないようにしっかりと蓋をし、ブリーザー関連、イグニッションコイルとプラグ、プラグコードの交換ができました。
モトグッツィはエンジンを下ろす事はそれほど労力がいりません。
でも、出来れば2万も走行していない車体ですのでエンジン、ミッション周りは問題がないと思いたいわけです。ですからこのまま乗せた状態で作業を進めて行くのですが、当然、かからなければエンジンを下ろし、分解、清掃、交換をしていかなければなりません。