
さて、いきなりですがあらかた錆びを落とし、そして塗装で錆びを止め、そんな事を繰り返し行なって一ヶ月以上が経過しています。それなりにパーツも揃い出し、ネジを磨きボルトをワッシャーをひたすら磨いてマニュアルが無いので忘れないように部分的にバラし清掃、組み立てを行い、このようなビフォーアフターまで持って行くわけです。
とにかくステップラバーなどのゴム製品がカチコチのプラスティックのようになり、ヒビや割れが進行し、内部が錆びています。このステップラバーがなかなか手に入らず、茨城にありますノブヒルさんとWKRCで知り合った縁で多くのパーツを安く譲っていただきました。
グッツィや海外の旧車に造詣の深いノブヒルさんは旧車の販売も行なっており、ものすごく状態の良いモトグッツィのレアな旧車や、イタリア製の当時パーツにこだわったバイクを展示しています。

その都度、外付けにバッテリーを繋いで通電チェックを行いながらの作業となります。注意点はサンポールを使って錆び落としを安価にしたものは翌日にはもう錆びがぶり返してしまいます。ですからしっかり錆びを落とした後は塗装なり、錆び止めケミカルを丁寧に塗布してあげなければなりません。
モトグッツィはほとんど全部と言って良いほどの車種が歴史あるドライブシャフトを介してリアを駆動するシステムになっていて、チェーンのメンテが必要ありません。これがチェーン駆動のマシンならばスプロケ関連やチェーンを新品に交換すれば済むとも言えますが、内部にオイルの皮膜がおそらくは残存している訳ですからハブにしてもギアにしてもエンジンにしても大きなダメージは無いと推理して作業を進めてきました。

いよいよ物語は核心に入ってくるのですが、どうでしょう?
アルミ製シリンダーに、ニカジルメッキが施されたエンジン内部は予想通り美しい状態を保っていました。イタリアの工業製品やドイツの工業製品の当時のレベルがとんでもなく高い事がよくわかるかと思うのですが、どうでしょうか?
浅間ミーティングなど旧車の多いイベントに行くとよくわかるのですが、当時のヨーロッパの鉄やメッキなどの品質は圧倒的に日本より高いと思います。特に自転車など趣味にしている人は理解しやすいと思うのですが、細かく繊細で耐久性が異様に高いのです。そもそもモトグッツィ が長い歴史を生き残れたのは頑強で整備がしやすく、壊れないというモノヅクリが国の警察の白バイや軍、アメリカなどの白バイや世界に向けての輸出で評価されたからです。
対して日本の良さは他には真似できない圧倒的な流通量における大量生産による画一的なデータサンプルの蓄積による、トラブルの回避であり、高性能化です。これは素晴らしい事であり、世界に冠たる日本メーカーとして誇りに思うところじゃないでしょうか?でも、古くなって行くと、維持が困難なのが日本製品で、メーカーがパーツをすぐ作らなくなるのは新しい物を買って欲しい理由もあるでしょうが、欧州はパーツが無いのは日本だけで、海外から仕入れれば潤沢に存在します。
エンジン内部に収まったオイルフィルターは14本の13mmのネジと、プラス数本で止められたオイルパンを外さなければなりませんが、外せばこのようにクランクからピストンまで下から丸見えの状態になります。これを整備性が良いととるか、面倒と取るかなのですが、頑強にシンプルに作られたエンジンは腐食することなくニカジルメッキで守られ、オイルパンを外せばエンジンがなにかしらの理由で不具合を起こして金属が剥離したり、壊れてもこのオイルパンに落ちますので、すぐに原因が特定可能で、健康状態も推察しやすい作りになっています。
製造から36年、放置10年の車両の中身としては、もちろん走行距離が2万もいっていない事もありますが、綺麗な状態を保っているのではないでしょうか?
デロルトキャブから社外のエアクリ、パワークリーナに変更されていて、ケミカルで清掃後、クリーナーオイルを塗布して装着です。ノーマルの箱型も考えましたが、整備のしやすさを考えてこのまま使います。
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オイル、フィルターを交換したら今度はプラグホールからオイルとガソリンを少し混ぜた物を挿入して、ギアを噛ませてリアタイヤを懸命に回してピストンとシリンダー内部をなじませます。
レストア作業はライダーズカフェ、浄蓮で行なっていたので、若いお客さんが手伝ってくれたりします。
音を聞いてみてください、ピストンが上下してキャブからエアを吸っている音が聞こえると思います。つまりそれがエンジンの圧縮によりキャブが霧吹きのようにエアとガソリンを送る音で、電気など一切使わないシンプルな機能がわかると思います。
それと同時にロッカーアームや、エンジン内部を通るプッシュロッド、タペットの点検を行いますが、ここでも、僅か数本のボルトを外せばエンジンヘッドが取り外せ、その調整が簡単にできるようになっています。
プッシュロッドで押し上げられた場所にあるアジャストスクリュー(画面上)をロックナットを緩めて調整するだけですが、これを5000km毎にやらねばなりません。最低限度、この調整を覚えないといけません。
シックスネスゲージ、0.2〜0.22で行いました。現代のよりだいぶゆるいですよね?
さて、いよいよ次回はエンジン始動ですかね。